Aviciiの一周忌に寄せて

Aviciiを初めて知ったのは、アルバム「True」が発売されて半年後くらいだったと思う。きっかけは、Twitterでフォローしていた誰かの呟きだった。Aviciiに関する話題だった気がするけど、詳しいことは思い出せない。

でも、YouTubeでWake Me Upを初めて聴いたときの衝撃は、今でも鮮明に覚えている。これまでの概念が完全に崩れた瞬間だった。EDMに似つかわしくないカントリー調の演奏、どうしたって印象に残る力強い歌声と、一度聴いたら離れられない旋律。その全てが初めて経験する音楽だった。

とにかく率直に思ったのは、こんな音楽とまだ出会えるのか、ということ。これでも一応30年近く生きてきて、大抵の音楽は知ったつもりでいた。もう音楽で心を揺さぶられることなんてない。明確に決めつけたつもりはなかったけど、無意識に、でも確実に諦めていたと思う。

だから、Aviciiのファンになるのは、曲が終わるよりも早かった。むしろ遅すぎたくらい。

Wake Me Upをきっかけに、リリースされた曲は全て、何百何千と聴いた。特に最新作「Avīci (01)」は新婚旅行で行ったモルディブで一晩中流して、今でも聴くと必ずあの美しいエメラルドブルーの海が蘇る、妻との思い出のアルバムとなった。


Aviciiが引退すると聞いたとき、そしてその理由が前向きな理由ではないと知ったときは寂しかった。でも、今振り返るとそれは大したことではなかったように思う。昔ほど精力的ではないにせよ楽曲制作は続けているようだったし、不意打ちのようなタイミングで発表されるリリースは嬉しくもあった。

ただ、突然の訃報はそんな細やかな楽しみも全て打ち消した。

1年前の今日、確か休日の朝だった。何気なく眺めていたニュース。眠気が一瞬で覚めて、大声をあげて飛び起きたのを覚えている。でも、心のどこかでこれは現実だと冷静に受け止める自分がいて、驚きは波のように引けていった。その後はただただ悲しみだけが満ち溢れた。

今でもこの感情を表現する言葉が見つからない。

今でもあなたのことを思うと何も考えられなくなる。偉大な才能だったのに。大切な存在だったのに。なぜ多くの人にとって希望だったあなたが、この世の居場所を失う必要があったのか。もしも、これまでの作品があなたの尊い命を削ることで生み出されていたとしたら、私は死に加担していたのだろうか。今後も聴く権利があるのだろうか。正直分からない。

ただ確かなことは、私含め残された者はあなたのいない世界を生きていくしかない。そのとき、きっとあなたが残してくれた作品は人生の大きな支えになるということ。これまでも、仕事で辛かったとき、人間関係で悩んでいたとき、「Wake Me Up」がどれほど心に強く響いたか。どれほど勇気付けられたことか。

あなたのおかげで、また前を向いて頑張ろうと思えた。その事実は決して否定できないし、きっとこの先も変わらない。だから私は、あなたが投げ出してしまったこの世界を、あなたの作品と共に生きていきたいと願う。

Avicii、今までありがとう。これからもどうか、安らかな眠りが続くことを心から祈って。

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